暁天獅子吼号の図蒔絵手箱
ぎょうてんししこうごうのずまきえてばこ
概要
六角紫水は、近代の日本漆芸をはるかに凌駕する中国漢時代の漆芸技法に衝撃を受け、その繊細で勢いのある描線と彫刻線を復元することに、後半生の情熱を傾けました。漢代漆芸技法から長い苦心の末に習得した様々な彫刻線を駆使して自在に描き、新たな表現を追及したこの作品で、帝国美術院賞を受賞。洞窟に差し込む暁光をあびて吼號する、堂々とした獅子の佇まいからは、困難を乗り越えた作者の自身とゆるがぬ信念が感じられます。
作者は現在の江田島市大柿町に生まれ、東京美術学校(現・東京藝術大学)漆芸科を第一期生として卒業。若き日は古社寺保存法による国宝指定調査に奔走して文化財保護制度の基盤整備に貢献し、以後、創作活動はもとより、漆芸に関する歴史的学術研究と科学的研究開発、時代の変遷に応じた応用範囲の拡大など多岐にわたり活躍。日本近代漆芸の先導者として重要な役割を果しました。東京美術学校教授、芸術院会員などを歴任。