菊雲鶴文食籠
きくうんかくもんじきろう
概要
初代金城一国斎は、大阪で漆芸を修行後、尾張徳川藩小納戸御用塗師に。初代の次男である二代は、諸国を遍歴して彫漆(塗り重ねた漆塗の層を彫刻する技法)の技術を習得する過程で“高盛絵(たかもりえ)”を考案し、大阪で開業。天保14(1843)年眼病治療のため広島を訪れ、江波焼陶工の長男・木下兼太郎に漆芸を伝え、兼太郎は三代一国斎を襲名して高盛絵を完成。以後、高盛絵は広島の伝統工芸として現在まで伝えられています。
高盛絵は漆塗面又は木や竹の素地に錆(さび、砥粉と漆液を混ぜたもの)を盛り上げてレリーフ状にし、これが固まった後に彫刻刀で整形し、色漆を塗って仕上げる技法。中国由来の彫漆が持つ立体的な効果をねらいつつ、彫と塑(そ)という技法の相違から、高盛絵ではその形態やデザインに柔らかさと自在さが増し、鮮やかに彩られて、動植物が写実的に表されます。本作では特に本物の菊花を貼り付けたような迫真的な表現が見所です。