北和城南古墳出土品(奈良県北部または京都府南部出土)
ほくわじょうなんこふんしゅつどひん(ならけんほくぶまたはきょうとふなんぶしゅつど)
概要
昭和12年に奈良地方裁判所より引渡しを受けたもので、出土地は明らかでないが、奈良県の北部から京都府南部にかけての古墳出土品と推定される。一括遺物の中に半円方形帯神獣鏡(はんえんほうけいたいしんじゅうきょう)と金鐶を含むが、年代は5世紀代に下がり、別の古墳遺物と考えられる。それ以外の遺物は、鏡3面と鍬形石(くわがたいし)、車輪石(しゃりんせき)、石釧(いしくしろ)、紡錘車(ぼうすいしゃ)などの石製品、碧玉製管玉(へきぎょくせいくだたま)、滑石製棗玉(かっせきせいなつめだま)、ガラス製小玉などで、1基の前期古墳の一括遺物とみても差し支えないようである。鏡は青銅製で、三角縁四神四獣鏡(さんかくぶちししんしじゅうきょう)には「新作大鏡…君子…師子…宜子孫」の銘文がみられる。また半円方形帯四乳だ龍鏡は倣製(ほうせい)(日本製)鏡で絹布が付着している。3面とも布が付着するが、とくに変形四獣鏡は厚く布に覆われ、文様も明確でない。鍬形石、車輪石、石釧などは、いずれも原形は貝製の腕輪であったが、石製になると形をかえて宝器化し、おもに前期古墳に副葬されるようになる。とくに本古墳遺物にはそれらの石製品が合計53個と多く含まれ、奈良・東大寺山古墳、三重・石山古墳、近年発見された奈良・島の山古墳出土の石製品に比肩できるものである。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.278, no.6.