瀞八丁
どろはっちょう
概要
大和大台ヶ原に源を発する北山川横谷の下流、多戸・玉置間の峽谷で、主にホーンフェルスから成る。両岸の絶壁は屏風の如く屹立し、清澄な河水は碧潭をなして鏡の如く、此種風景の最も代表的なものである。
大和國大臺ケ原ニ發源スル北山川横谷ノ下流多戸玉置間ノ峽谷ヲ成セル部分ヲシ主トシテ「ホーンフエルス」ヨリ成レル兩岸ノ絶壁ハ屏風ヲ立テタルガ如クニ屹立シ奇岩怪石之ニ沿テ横ハリ河水ハ碧潭ヲ成シテ水面ハ鏡ノ如ク滑カニ水ハ極メテ清冽ニシテ底石ヲ數フヘク其ノ流レサルガ如クニシテ極メテ緩漫ナル流ヲ成セルハ瀞ノ名アル所以ニシテ此ノ種景致ヲ代表スルモノノ一タリ潭ノ最モ深キ處ハ十五尋ニ達ス蓋シ往古一瀑布アリテ浸蝕作用ノ爲ニ漸次退却シタルノ遺蹟ニ屬シ上流ノ下瀑及ヒ上瀑ト稱スルモノハ其ノ殘骸ニ外ナラサルナリ 斷崖ノ上方ニハ天然林繁生シ中ニハさはらつが、かうやまき、ひのき、もみつが、すぎ等ノ老樹ヲ混生シ其ノ他多數ノ常緑及ヒ落葉樹アリ、崖上ニハさつき極メテ多ク花時水底ニ映スルノ状頗ル美觀ナリ幽邃ト艷美トノ兩趣ニ富メルノ溪谷トシテハ他ニ類例少シ