褐釉蟹貼付台付鉢〈宮川香山作/〉
かつゆうかにはりつきだいつきばち〈みやがわこうざんさく〉
概要
褐釉蟹貼付台付鉢〈宮川香山作/〉
かつゆうかにはりつきだいつきばち〈みやがわこうざんさく〉
東京都
明治/1881
素地は黄白色陶胎で、轆轤成形した後に器形に大きな変化を作り出す。鉢の口辺は不整楕円形にして内にくぼませ、口縁端部を篦削りし平らに仕上げ、体部には張りと丸みを作り出し、鉢の体部下方から台部には大胆な篦削りを施し、荒く幅広で凹凸のある削り目をそのまま表す。鉢の底には筒状の安定感ある脚台を作り出し、底は内を荒く篦削りし、やや幅広の高台を削り出す。
内面全体と外面鉢部上半には透明感ある褐釉を掛け、一部には青白色から白色を呈する藁灰釉を流し掛ける。釉は全体に流条化して垂れて底まで達し、変化ある釉景色を作り出す。鉢の体部正面には大小二匹のほぼ実物大に作り出した渡り蟹を連なって貼り付け、褐・黒・青・紫などの上絵具で賦彩する。
総高36.5 高30.4 口径19.5×39.8 底径16.3×16.5(㎝)
1口
東京国立博物館 東京都台東区上野公園13-9
重文指定年月日:20020626
国宝指定年月日:
登録年月日:
独立行政法人国立文化財機構
国宝・重要文化財(美術品)
明治時代全期間を通じて最も著名な陶芸家として国内外で評価されている宮川香山(一八四二-一九一六)の作品である。
本台付鉢は、このような彫刻的な作品を創出した宮川香山の陶芸の一つの到達点を示す作品で、明治十四(一八八一)年第二回内国勧業博覧会出品作である。中世の焼締陶器を彷彿させる他に類例が知られていない大胆な変化を作り出した大振りで力強い鉢の正面に、大小二匹の渡り蟹がほとんど実物大で、甲羅や手足の斑紋、形態などきわめて忠実で写実的に表現されて貼り付けられる。全体に施された褐釉も見事に掛かり、藁灰釉も流れて変化ある釉景色を作り出している。
本作品は、宮川香山の代表作の一つであるとともに、明治時代前半期において製作時期が知られ、博覧会出品歴が東京国立博物館蔵『第二回内国勧業博覧会写真帖』所載の写真資料により確実に判明する唯一の作品として貴重である。