林家舞楽
はやしけぶがく
概要
山形県西村山郡河北町谷地に鎮座する谷地八幡宮の神職の林家に伝承されている舞楽で、谷地八幡宮の秋の例祭(九月十四日・同十五日)、寒河江市の慈恩寺の春の法会(五月五日)等に舞われる。
舞楽は、古く遣唐使の廃止頃までに、わが国に朝鮮半島の諸国や中国から渡来し、現在の京都、奈良、大阪に楽所【がくそ】が置かれて伝承されてきた。谷地八幡宮の舞楽については、ここに所蔵される「舞楽由緒」によると、「貞観二年(八六〇)僧円仁に従って羽州【うしゆう】に来た四天王寺楽人林越前が山寺の根本中堂で舞楽を舞った」とあり、この林越前が後の林家舞楽の祖であると伝えている。
伝承曲目は燕歩【えんぶ】(振鉾)、三台、散手【さんびゆ】、太平楽、喜禄【きろく】(安摩【あま】)、二ノ舞、還城楽【げんじようらく】、抜頭【ばとう】、竜王(蘭陵王【らんりようおう】)、納蘇利【なそり】の十曲で、すべて林家に伝承されており、林家が中心で舞うものであるが、太平楽と童舞である還城楽、抜頭は林家以外の人が舞う。林家の嗣子が十三才になると初めて燕歩を舞うとされている。童舞を舞う稚児はかつては坊中の子供で六才からと限られていたが、今日では適宜に選ばれている。
楽器は、かつては三管三鼓が揃っていたが、現在は竜笛と太鼓、鉦鼓の三種のみで、太鼓の縁を打って羯鼓の代替にしている。
林家舞楽は舞楽の地方化したものとして顕著な特色を有するものである。