山屋の田植踊
やまやのたうえおどり
概要
旧暦一月十五日の小正月を中心として行なわれる豊作祈願の行事は、全国各地でさまざまに伝承されてきているが、東北地方一帯ではこの種の予祝行事として田植踊が広く分布している。
山屋の田植踊は、前口上から始まり、「三番叟」、女装青年と道化男一八【いつぱち】とが鍬を手にして踊る「苗代こせァ」、翁・狐・一八の三人で演じられる「五穀くだしと種蒔き」、子供たちの踊る「中踊」、女装青年の踊る「早乙女」、若旦那が作り馬に乗って田植の成果を見まわる「御検分」、さなぶりの準備作業を順に踊るもみすり・ぬかはなし・米つきなどの「さなぶり支度」、仕事着を洗うさまを踊る「しろあらい」、秋の刈入の踊である「稲刈」と、一年の稲作過程を歌と踊で順々に演じてみせる。さらに囃子舞などの余興も加えられ、また一八と胴前【どうまえ】、あるいは一八の妻(妊娠中)との滑稽な問答もあって、進行に興が添えられる。
初春の予祝の行事が風流化され、きわめて多彩な芸内容を持った田植踊として展開したものであり、また早乙女が頭に冠った花笠を美しく回転する「笠ふり」は、岩手県中部地方の田植踊の特徴をよく伝えているなど、田植踊の一典型として価値が高い。
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国指定文化財等データベース(文化庁)