おとづれ
概要
7 尾竹竹坡(1878−1936) おとづれ 1910年
新潟生まれ。本名染吉。はじめ笹田雲石に師事して南画を学ぶ。1896年に上京し川端玉章に入門、また小堀鞆音、梶田半古に大和絵系の技法を学ぶ。日本美術協会をはじめ初期院展などに出品、受賞する。1905年に石井林響らと大同絵画会を結成。09年以降は文展に活動の舞台を移し、19年に八火社を結成。
本作品の、童子を従え、菊に竹、薄が生い茂る竹垣の間を進む男性は歌人でありまた密使でもあるというが、特定の物語などを題材にしたわけではない。竹坡は、以前知人を訪問した時に主人不在の書斎を見て、がらんとして物淋しい感じを受けたところから、この作品の着想を得たという。着色せず地色を生かした地面の表現は、金屏風の伝統的な空間処理を念頭に置いたものであるという。また輪郭線の目立つ草花の描写は当時装飾的と評された。強烈な色彩を抑えた秋の静かな雰囲気の中に、竹坡の装飾への志向がうかがえる。