唐蜀黍(とうもろこし)
概要
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唐蜀黍
1939年
紙本彩色 屏風2曲1双
各167.6×181.0cm
右隻右下に落款・印草;左隻左下に落款印章
1939 第26回院展
東京国立近代美術館蔵
Indian Corn Plants
1939
color on paper, a pair of twoーfold screens
each 167.6×181.0cm
signed and sealed lower right on the right screen; signed and sealed lower left on the left screen
The National Museum of Modern Art, Tokyo
古径は、この年の院展に出品を予定していた作品が仕上がらず、かわってこの作品を出品することになったのだが、展覧会初日にはまにあわず、会期途中からの出品となった。そのため、当初、同展の批評記事のなかでは、この作品に言及したものはみあたらず、会期なかばからとりあげたもののなかにみいだすことができる。そのひとつには、つぎのように評されていた。
「その太いゆるやかな線や墨のたらし込みなどいづれは宗達か宗雪あたりのあつさりした草花図をならつたものに相違ない。特に問題的のものではないが、これまで古径の作に見た引締つた鋭いセンスの代りに余裕のあるおほらかな品格が此の作での味はひどころであらう。」(1)
まず、この評者が指摘するように、この作品を特色づけるのは、それまでの古径の作品にみられた意志的な線が抑制され、かわって輪郭線をなくした墨の「たらし込み」という技法である。たしかに、この技法は宗達の墨画にみられるもので、古径は、それに倣いながら、墨の濃淡の譜調をよりひろくとり、しかも葉の形ののびやかさを強調して、そよぐ風を感じさせるようなひろがりを表現している。
(1)飯袋子「院展、古径の『玉蜀葵』」、『読売新聞』1939年9月16日(タ刊)、p.2