秋山遊猿図
しゅうざんゆうえんず
概要
この作品には、左右の画面を横断する、大きな枝ぶりの松をはさんで、右に猿、左に鹿が描かれています。松の枝や背景の岩を描くごつごつとした輪郭線のタッチとは対照的に、猿や鹿は細い描線で一本一本の毛を描き、動物の柔らかい毛並みを表現しています。この絵の筆者の森狙仙は、江戸時代後期に大坂で活躍した画家です。綿密な観察に基づいて動物を描くことで、独自の画風をつくりあげました。なかでも猿の毛並みの表現は評判で、「狙仙の猿」と言われるほどでした。たしかに、さわった時の柔らかな毛の感触がリアルに想像できるような表現です。実は、この作品は、もともと床の間の大きな壁の絵であったものが、掛軸に仕立て直されたと考えられています。鹿は秋を示すモチーフです。他の壁や襖にも紅葉などが描かれ、部屋全体に秋の自然の風景が広がっていたかもしれません。こうした画題から、それほど格式張った部屋ではなく、ゆるやかに和むことのできる客室のような場所にあったと想像されます。
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