自画像
概要
24
岸田劉生(1891-1929)
KISHIDA,Ryusei
自画像
Self-Portrait
大正3(1914)年
杉本健吉氏寄贈
大正初年には後期印象派の影響を受けた作品をフゥウザン会に発表していた劉生は,まもなく北方ルネサンスの画家デューラーに傾倒することになる。その濃密な写実作品は,対象の存在へ肉薄すると同時に,油絵具そのものの物質感も強く主張するものであった。この作品は,彼が後期印象派からデューラーへと関心を移しつつある時期に描いた多数の自画像の中の一枚である。美術史を逆行することへの不安と,やみがたい写実への欲求,そのせめぎあいが,自己確認として多数の自画像を彼に描かせたのかもしれない。眼光の鋭さが,画家の強い意志を感じさせる。(S.0.)