金銅塔鈴
こんどうとうれい
概要
密教は仏教の教義の一つで、秘密の教えという意味です。密教では、「密教法具」(みっきょうほうぐ)と呼ばれる、独特の金属製の道具が用いられます。密教法具は壇の上に規則にのっとって整然と並べられ、僧侶は壇を前に儀式を行います。密教法具の種類はさまざまですが、その内容は大きく2つに分かれます。一つは捧げものや液体、花やお香を入れる器類です。もう一つは壇の上を飾るシンボルのような役割を果たします。こうした密教法具の中に、鈴、つまりベルがあります。このベルは儀式を行う壇の上を飾るシンボルであるとともに、時に儀式の中で実際に振って鳴らします。鋭く響く音は、儀式を行う場に仏を招きよせ、また人々の心の奥に眠っている信仰心を呼び覚ますという意味があるとされています。
こうしたベルの中に、握り手の先端を仏塔の形につくったものがあります。ここにご紹介するのもその一例です。銅を鋳造して形をつくり、表面を鍍金しています。塔の身から上は取り外しができるようになっており、中は空洞です。あるいは中に「仏舎利」(ぶっしゃり)を入れていたのかもしれません。ベルの口縁には銘文が刻まれており、その中に1306年の年記があります。肉厚で重厚な作風は、14世紀初期という時代性をよく示しています。