牡丹唐草蒔絵伏籠
ボタンカラクサマキエフセゴ
概要
伏籠は、衣服に香を薫きしめるための調度である。中に阿古陀形の香炉を置くのが一般的 で、香炉で薫いた香りを、籠の上に被せた着物に巡らせる。髪や着物に香を薫きしめる習 慣は、平安時代の貴族の生活には欠かせない身だしなみであった。伏籠はその後、雅びな 生活を象徴する調度として、近世の大名婚礼調度にも採用された。本作品のような蝶番を つけた立方体の組み立て式は、近世以降の形である。本作品は、詰梨地に金銀の薄肉高蒔 絵の技法により、牡丹唐草文を表し、菊花紋、桐紋、竹輪に九枚笹に対い雀紋を散らして いる。蝶番や枠の四方の飾り金具にも同じ文様が施され、華やかな仕上りを見せている。 金網は銀製。なお、黒塗りの枠と飾り金具のいくつかは後の補修である。