青磁鉢
せいじばち
概要
大きな深緑色の鉢が1つと、比較的小さな青緑(あおみどり)色のものが2つ。これらは同じ場所から発見されたものです。大きな鉢は、内側の縁の部分を、渦巻状の文様がぐるりと取り囲んでいます。のぞきこんでみると、牡丹や蓮などの花が、底の部分には菊の花が浮き彫りで表されています。外側には、縁の近くに波の文様、その下に唐草文様、底に近い部分には蓮の花びらが描かれています。厚手で文様も大きく、おおらかな印象です。中国の元時代(14世紀)につくられた天龍寺青磁(てんりゅうじせいじ)と考えられています。
小さい方の鉢はそれぞれ、全体が蓮の花びらにみたてられています。長い間土に埋まっていたため一部変色していますが、澄んだ青緑色で、やわらかで上品な光沢をもっています。この青緑色は材質の粘土そのものの色ではなく、粘土にかけられたガラス質のコーティング、釉薬(ゆうやく)の色です。これを青磁釉(せいじゆう)といいます。このやわらかな質感は、白っぽい粘土の上にたっぷりと青磁釉をかけて表現されたもので、南宋時代(13世紀)のものと考えられています。
これらの鉢は、昭和28年(1953年)に、鎌倉にある個人宅の庭から偶然に発見されました。土の中に3つの鉢が伏せて重なった上に、ふたのように板状の石があったようです。このような出土例はほかになく、遺跡としての性格もはっきりわかっていません。鎌倉に幕府があった頃、有力な武士か寺院が所有していたものかもしれません。誰が何のために埋めたのか、想像してみるのも面白いかもしれません。