深鉢形土器
ふかばちがたどき
概要
縄文土器は、約1万3000年前、日本列島に人びとが定住するようになって、最初に出現したやきものです。基本的に鉢の形の器で、縄目の文様をもつものが多いことから、縄文土器と呼ばれています。 それまでは樹の皮や動物の皮で作った器を使っていたのが、水が漏らず、火にかけることができる土器を使うようになって、人びとの食生活は大きく変わりました。生では食べられなかったもの、硬くて食べられなかったものが、食べられるようになったのです。
1万年も続く縄文時代のなかで、もっとも土器に華やかな装飾がなされたのが、この土器が作られた縄文時代中期です。この時期は東日本を中心に各地に大きな村々が作られたため、縄文時代の成熟期とも言われています。
この土器をよく見てみましょう。口が大きく開き、ややくびれた部分から、ふっくらとしたカーブを描きながら底に向かってすぼまる形です。大きさからすると、あちこちに持ち運ぶものではなく、据え置いて使う、貯蔵用の器だったのでしょう。木の実などを入れていたのでしょうか。器の表面には、細い竹を縦に割ったもので引っかくように筋をつけ、縦縞や、渦巻などの文様があらわされています。上の方、把手のような部分は、粘土でつくった別のパーツをつけていますが、把手から器本体にかけて、横方向に文様がつながっているのが分かるでしょうか。なかなか凝ったつくり方です。サイズが大きいこと、器の表面に立体的な装飾がなされていることなど、縄文時代中期の特徴をよくあらわしている土器です。