雲豹皮衣
うんぴょうがわころも
概要
台湾にいる先住民族は16部族とされており、そのひとつであるパイワン族は、台湾の南部に暮らしています。この服は、パイワン族が用いたもので、背面は毛皮、前面は毛織物になっています。毛皮は、もはや台湾では絶滅してしまったといわれる、「雲豹」の毛皮を用いています。雲豹は、豹と猫の中間のような肉食獣で、その毛皮は淡く黄色い毛が広がるなかに、黒い毛の斑(まだら)模様が表われています。雲豹という名前は、この斑模様が空に浮かぶ雲のように見えることに因(ちな)みます。
台湾の社会は、「頭目(とうもく)」「貴族」「勇士」「平民」などから構成される階級社会であり、このような雲豹の毛皮の服を着ることができるのは、最も身分が高い頭目クラスに限られました。雲豹の毛皮の柔らかそうな質感と、鮮やかな斑文様をごらんください。また、服の前面は毛織物になっており、左右の前身頃には、両手を広げて立つ人物の上下に頭がならんだ図様が表わされています。実は、パイワン族には首狩りの習俗があったので、この図様は、それに因んだ情景であろうと考えられます。