大井戸茶碗 有楽井戸
おおいどちゃわん うらくいど
概要
この茶碗は、茶の湯でお茶をいただくのに使われたものです。
ゆったりとおおらかでやさしいかたち、ほんのり赤みを帯びたやわらかい枇杷色(びわいろ)。
鮮やかな緑の茶がたてられたさま、そしてその茶碗が手の中に納まったさまを想像してみてください。それだけで心おだやかになれそうな茶碗です。
実はこの手の茶碗は、朝鮮半島で生活の器としてたくさんつくられていたものです。素朴な風情が、戦国の武将や利休をはじめとする茶人の美意識にかない、井戸茶碗と呼ばれて茶の湯の席で使われるようになりました。なかでも、この茶碗のように口径がおよそ15センチを超える大きなものは、大井戸茶碗とよばれ、高く評価されました。茶碗の底の高台(こうだい)と呼ばれる部分が、ぐっと高くなっていて、その周囲には釉薬の縮れによる梅花皮(かいらぎ)と呼ばれる白いぶつぶつの文様ができています。ここが、井戸茶碗の見どころとされます。
有楽井戸という銘は、織田信長の弟の有楽斎(うらくさい)が所持していたことにちなんでつけられました。なんと、江戸時代の豪商紀伊国屋文左衛門が所有していたこともあります。のち、明治期を代表する茶人、松永耳庵(まつながじあん)の所有となり、耳庵から当館に寄贈されました。