織部扇形向付
おりべおうぎがたむこうづけ
概要
茶の湯で、客を招いて抹茶でもてなす集まりのことを茶会といいます。正式な茶会では抹茶を飲む席の前に懐石(かいせき)と呼ばれる料理を振る舞います。懐石で用いられる器の一つが、向付(むこうづけ)です。膳の向こう側に置かれることから、向付と名前が付けられました。
この向付は、美濃地方で作られた織部というやきものです。白と赤、二種類の土をつなぎ合わせてろくろで筒形にしたのち、内側に扇の型を入れて成型しています。白土(しろつち)の部分には銅緑釉(どうりょくゆう)という緑色の釉薬、赤土(あかつち)の部分には長石釉(ちょうせきゆう)という乳白色の釉薬をそれぞれ掛け、色を切り替えています。
さらに赤土部分の表面には、扇の輪郭のうち骨を束ねて留める要(かなめ)から広がる直線部分の側面に縦じま、扇の先端となる曲線部分の側面には、漁で使う網を広げて干している様子をモチーフにした網干(あぼし)文があらわされています。大らかな線で模様を描き、その中を白く塗って仕上げています。
上からは扇の形を、横からは彩りや模様のバリエーションを楽しむことができます。見る角度によって表情を変えるのは、この器の面白いところでしょう。様々な角度からご覧ください。