南氏庭園
みなみしていえん
概要
南氏庭園は,大阪の阪南市南東部に所在する旧家の庭園である。南氏は江戸時代の豪農に由来し,明治期は地域の連合戸長を務めた。東西約70m,南北約50mの住宅敷地は,居住区域と垣内(かいと)から成る。居住区域には,明治22年(1889)頃に建てられた主屋を中心に,表玄関・座敷棟が建つ。庭園は,座敷棟南の主庭,北の露地庭を中心とする。特に主庭は築山,和泉(いずみ)砂岩(さがん)の滝(たき)石組(いしぐ)みなどから成る枯(かれ)山水(さんすい)庭園(ていえん)で,明治前期の築造の頃から手を加えられつつ,次第に現在の形態にまで変容してきたものである。また,垣内は大阪近郊の農家によく見られた多目的な作業空間の遺存例として貴重である。敷地の全体には,樹齢約400年のヤマモモなどの古木も残されている。南氏庭園は,近代における大阪泉南地方の造園文化の発展に寄与してきた意義深い事例である。