老猿
ろうえん
概要
右手をついて斜め上方を睨(にら)み、左膝を立てて岩の上にすわる猿の像。左手には鷲(わし)の羽を握り締め、周辺には羽毛が飛び散っています。この猿は、つい今しがたまで鷲と格闘していたのでしょう。視線の先の空間は無限に広がり、雄大な雰囲気を醸しだしています。猿の一瞬の姿を捉えながら、時間の経過と空間の広がり、過去に繰(く)り広げられた「動」と現在の「静」を、巧みに表現しています。
高村光雲は、江戸時代も終わりに近い1852年、江戸・浅草に生まれ、仏像を制作する工房に弟子入りして、木造彫刻の腕を磨きました。やがて明治維新を迎え、日本は近代国家の仲間入りを果たします。芸術文化が西欧のスタイルを取り入れる中で、高村光雲はそれまでにつちかった日本の伝統的な木彫技術に、西欧彫刻の写実性を加え、それまでになかった新しい彫刻世界を作り出しました。それはあたかも作品自身が、ストーリーを語っているかのような存在感を示すものでした。
この作品は1893年、アメリカのシカゴ万国博覧会に「老猿」の名で出品され、賞を受けた、高村光雲の代表作です。素材には年代をへて茶褐色となった栃(とち)の大木を使い、知人から生きた猿を借りて観察したことを、のちに作者自身が語っています。
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