病める子
やめるこ
概要
ロッソ作品の主題は約40種だが、その多くにいくつかのヴァージョンがある。この《病める子》の原作は、1889年ロッソが一次入院したおりに造られている。彼の作風には、同時期の《病院の病める男》のように、タッチを生かし、光が錯乱する溶岩のような形態の中に対象を融合させるものと、この作品のように、滑らかな凸凹の内に光と影を溶け合わせるものとがある。そして、蝋の効果として、前者ではその柔軟性と色彩感が、後者では光を半ば透過させる性質が生かされている。傾けた顔面の下半が繊細な調子の中で闇と空気に溶け込んでいくさまは、題材の文学的な情感とも調和しているといえるが、一方この単純化された形態の新鮮さは、ブランクーシの《眠れるミューズ》(1910年)などの20世紀彫刻にも影響を与えることとなった。(M.T.)