願成寺の黄檗鉄眼版大般若波羅蜜多経および収納木製箪笥
がんじょうじのおうばくてつげんばんだいはんにゃはらみたきょうおよびしゅうのうもくせいたんす
概要
本寺が所蔵する黄檗鉄眼版大般若波羅密多経(大般若経)は、禅僧鉄眼の17年に亘る勧進により延宝6年(1678)に開版した鉄眼版一切経(大蔵経)版木を以って、本経に含まれる大般若経のみを印刷、購入したものである。
制作時期は経典内部に手書きで追記された願文より、文化・文政年間(1804-1830)頃と推定される。後世に補われた巻や、虫損・継ぎ目部分の剥がれ等が見られるものの全体的には良好な状態で保存されている。追記願文によれば、願成寺の観音道場(「観音堂」と称された国重白山神社か)の転読に用いるとの用途が記され、続いて資金を寄付した施入者署名や縁者の法名等が記されている。
最もこの経典で注目されるのは、表紙裏または背表紙裏に経典購入資金を施入した人々として、江戸および関東周辺・信越・近畿の町人や武士等と思われる人々の住所・氏名が記された願文が存在することである。
当時の住僧(祐賢か)が関東へ赴き、勧進・開帳といった手段で資金集めを実施したものと考えられる。こうした関東近郊を主軸とした活動は、能登地方では珍しい事例であり、当時の僧侶の活動を知る上でも重要である。
なお、収納箪笥についても同時期に作製されたものと考えられ、引き出し前板部分に施入者の名前が墨書きされている。