室内遺跡(房王寺廃寺)出土瓦
むろのうちいせき(ぼうおうじはいじ)しゅつどがわら
概要
室内遺跡(房王寺廃寺)出土瓦
むろのうちいせき(ぼうおうじはいじ)しゅつどがわら
長田区前原町1丁目、六番町2丁目 室内遺跡(房王寺廃寺)出土
奈良時代~平安時代
粘土
8点
来歴:2004神戸市立博物館
参考文献:
・神戸市立博物館『まじわる文化 つなぐ歴史 むすぶ美―神戸市立博物館名品撰―』図録 2019
軒丸瓦3点、軒平瓦2点、丸瓦1点、平瓦2点の合計8点の瓦を所蔵しています。
軒丸瓦は瓦当面径15.0㎝~復元径17.2㎝の大きさがあります。瓦当面に三重の圏線を施しているもの(写真手前右)は、通常みられる外周部分の圏線は省略されています。この型式の瓦は後期難波宮に使われた型式で、奈良時代のものと判断されます。複弁蓮華文軒平瓦は2種類あり、ひとつは2枚1組になった花弁(複弁)が4組十字状に配置されているもの(写真手前中央)は、中央の蓮の花托を表現した部分(中房)には、蓮の種子を表現した5つの蓮子が十字形に付けられています。2つめは単弁蓮華文が2つ重なった文様(写真手前左)と表現する方が正確と考えられます。外側の花弁のなかに短い子葉を表現します。中房の部分には蓮子が1+8粒設けられています。
軒平瓦は、瓦当面残存幅22.3~23.5㎝、中心に釣針状の文様を対称に置き、その左右には同様の文様を、同じ方向に2つずつ上下に転回させて配置します。文様の退化具合からみて平安時代の製品と考えられます。なお、この瓦には、凸面側に赤色顔料が直線状に付着していました。これによって、軒の部材(茅負)に赤色顔料が塗布されていたことが判ります。寺院の伽藍に相応しい丹塗りの瓦葺きの建物と推定されます。
丸瓦の凸面は円痕状の叩き目、凹面には布目圧痕が残ります。平瓦の凸面には円痕状の叩き目、凹面には板状工具による横スリ消し痕が残ります。
以上のように、瓦の文様型式から奈良時代~平安時代の時期幅が認められます。これらの瓦は室内小学校の校庭から出土したと伝えられます。地元には房王寺という字名が残ること、新湊川の改修工事に先立つ発掘調査で、仏の塑像と思われる台座~脚の一部が発見されていることから、この付近に古代寺院の存在が想定されています。なお、寺域の範囲、伽藍配置などは不明です。
【古代の神戸】