旧唐津銀行本店 (附 ・ 棟札一枚 明治四四年六月四日)
きゅうからつぎんこうほんてん(つけたり むなふだいちまい めいじよんじゅうよねんろくがつよっか)
概要
旧唐津銀行本店は、明治45年(1912)に建設された煉瓦造の銀行建築で、設計は清水組の田中實、監修は辰野金吾である。建物は構造体を煉瓦造として外装にタイルを張り付けた初期の事例で、煉瓦からタイル張りへと移行する過渡期の作品として評価される。外観には「辰野式」の建築表現が用いられるが、通りに面する壁面を白い色モルタル壁で覆う点や連続する半円形アーチで飾る意匠は、辰野が建築家として活動した前期と後期の建築様式の融合を図るとともに、壁面にリズムと華やかさを加えた田中のデザイン力が窺えるものである。また、内部意匠には曲線を用い、柔らかく斬新なデザインに時代の先取性も窺え、マントルピースの意匠や二階貴賓室の装飾は特に優れている。
旧本店は、合併による銀行名の変更等があったものの、平成9年(1997)に土地建物が唐津市へ譲渡されるまで銀行建築として使用され、建物のほとんどが建設当時の状態で良好に受け継がれてきたものである。さらに、平成20年6月から同23年3月にかけて行われた保存修理工事では、史料や痕跡等の根拠に基づいて建設当時の姿へ修復が行われるとともに、耐震補強が実施され現在良好に活用がなされている。