波に鯛文錆絵衣裳盆
なみにたいもんさびえいしょうぼん
概要
高岡市出身の漆芸家・高瀬直(本名・直義/号・直→蒼風→想風)による、鯛があしらわれた祝事用の着物入れである。
見込み前面に塗られた黄土(うるみ)色の両端には、4匹ずつ鯛が向かい合っている。その間は銀の線で仕切られ、蒔絵により波紋が描かれる。また鯛・波の文様や、盆の中央が膨らみ、両端はせり上がってワラビ手の形状をなしていることから、盆全体で船を表現していることがわかる。
黒に囲まれた黄土色に走る銀のラインは落ち着いた雰囲気の中にも、斬新に抽象化された意匠が感じられる。作者には魚介類をあしらった「海の幸」シリーズがあり、本作品も作者が得意としたモチーフである。目を見開いた鯛はユーモラスな中にも、作者の愛着が感じられるものとなっている。