風景(パリ)
ふうけい(ぱり)
概要
陽光降り注ぐ川沿いの道。川向こうの建物や街路樹は日陰に沈み、前景の道行く人々を対照的に明るく浮かび上がらせています。
作者の和田三造(1883-1967)は、兵庫県朝来市出身。東京美術学校に学び、1907年に創設された文展の第1回展、第2回展で最高賞を連続受賞、一躍画壇の注目を集めます。将来を嘱望され、文部省美術留学生としてヨーロッパに派遣。パリの美術学校などで学びつつ、帰途に巡ったアジア各国の美術工芸により強い刺激を受けて帰国しました。
この作品は、画中の書き込みから、パリで制作されたことがわかります。石造りの建物が立ち並ぶいかにも西洋的な街景を、掛け軸などの東洋の絵画を思わせる縦長の画面にとらえた構成からは、やがて本格的に日本画に取り組んでいく作者の志向が垣間見えるようです。