花卉文壺
かきもんつぼ
概要
【作品解説】
側面に4つの円窓を設け、3種類の抽象化した植物をそれぞれに配しています。肩上部には斜文と菱文、下部には蓮弁文を巡らせています。植物のまわりのつぶつぶとした表現は、先端が輪状になった鏨を打ち込み、粟粒をまいたように見せる「魚々子打ち」という技法で、均質に一つ一つ打ち込むには大変な根気と緊張感を要します。正確緻密な魚々子打ちは作者の得意とする技法でした。本作は日本工芸美術会第1回展の出品作です。
【作家略歴】
1875(明治8)
広島県豊田郡(現在の三原市)生まれ。本名は亀蔵
1891(明治24)
広島県の特選生として東京美術学校(現東京藝術大学)入学
1896(明治29)
東京美術学校彫金科を卒業、同校研究科で加納夏雄、海野勝珉に学ぶ
1902(明治35)
研究科修了後、自営
1909(明治42)
香川県立工芸学校教諭
1915(大正4)
教職を退き、四国八十八ヶ所を巡礼、奈良の法隆寺に滞在して古美術の研究に専念
1918(大正7)
大正天皇御即位記念「金荘飾太刀」の装飾彫金を担当
1919(大正8)
東京美術学校教授
1927(昭和2)
帝展に工芸部新設、その後、審査員あるいは無鑑査として毎年出品
1934(昭和9)
帝室技芸員
1935(昭和10)
日本彫金会会長、帝国美術院会員
1937(昭和12)
帝国芸術院会員
1948(昭和23)
東京都練馬区で没。享年74歳