蔵王権現立像
ざおうごんげんりゅうぞう
概要
神仏習合思潮のなかで誕生した日本独自の尊格である蔵王権現(ざおうごんげん)の彫像。修験道(しゅげんどう)の祖とされる役行者(えんのぎょうじゃ)が感得したと伝承されるが、文献上では、京都・醍醐寺(だいごじ)の開山である聖宝(しょうぼう)(832-909)が金峯山(きんぷせん)において造立した三軀(く)の像のなかに「金剛蔵王菩薩」が含まれているのが注意され、史実としてはこの頃に成立を求めるのが穏当だろう。本像は岩座まで同材から彫り出す一木彫像(いちぼくちょうぞう)。忿怒(ふんぬ)の相のなかにも平安後期風の典雅さが感じられる。失われた右腕は上方に振り上げ、金剛杵(こんごうしょ)を握っていたものか。
なら仏像館 名品図録. 奈良国立博物館, 2010, p.112, no.145.