雨漏茶碗 銘 蓑虫
あまもりちゃわん みのむし
概要
浅めの小振りな茶碗で、端折りで素直な姿をしている。灰色の素地で、全体に薄手に作られ、これに白土を化粧掛けしてから高台際を削りまわしている。高台際の箆目と、高台内の削り目は縮緬状となる。淡黄色の釉が総体に厚く掛けられ、釉の溜っているところや縮緬状の削り上では、梅花皮状となり青白色を呈している。見込みは中心で浅い茶溜りとなり渦状を呈し、そのまわりに砂目跡が大きく四つ残る。口縁下の釉にはピンホールが多く、そこから淡く濃くしみが雨漏りのように生じて景色となり、外側には雨漏りのしみとともに、白土を掛けそこなった火間が茶色くなり、一部には焼成中のくっつきを剥がした跡もある。高台畳付きにも目跡が四つ残る。どこか頼りなげな気分のただよう茶碗だが、高台脇の削り目の見事さとあいまって、茶の湯の道具としての調和を生むことができたにちがいない。
内箱の蓋裏には、「月清集上 ふるさとの板間にかかる蓑虫の もりける雨をしらせ嘉穂成る」の色紙があったことが『大正名器鑑』に載っている。「蓑虫」の銘は、器表の雨漏りと「もりける雨」から命銘されたものといわれている。内箱の蓋表の「高麗 茶■ 蓑虫」の墨書は、松平不昧の筆と伝える。
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