岐阜県元屋敷陶器窯跡出土陶器
ぎふけんもとやしきとうきかまあとしゅつどとうき
概要
本件は、元屋敷(もとやしき)陶器窯跡から出土した安土桃山時代から江戸時代の出土陶器の一括である。当窯跡は、岐阜県土岐市(ときし)泉町(いずみちよう)久尻(くじり)に所在する古窯跡群である。
昭和五年(一九三〇年)、荒川豊蔵(あらかわとよぞう)よる牟田洞(むたぼら)窯跡の発見を契機として、美濃地域の各地で古窯跡の調査が実施され、安土桃山時代から江戸時代に黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部といった桃山茶陶が、これらの古窯で焼成されていたことが明らかになった。本件は、この動向を踏まえ、昭和六年(一九三一年)に岐阜県多治見(たじみ)工業学校(当時)が調査した、元屋敷陶器窯跡からの出土品一括である。
これらは元屋敷窯で焼成された織部黒・黒織部・志野織部・青織部・総織部・赤織部・鳴海織部・美濃唐津・美濃伊賀に分類される各種織部を中心に、元屋敷窯の操業以前の大窯(元屋敷東一号~三号窯)で焼成された黄瀬戸や志野を含む多様な内容で構成され、各個体の遺存状態も概して良い。
現在陶芸史上で高く評価されている伝世品のなかにも、この窯で生産された数多くの優品を見ることができる。
これらは、わが国の窯業史上で大きな転換期と評価されている安土桃山時代から江戸時代にかけての、美濃窯における陶器生産を考えるうえで貴重な内容を持ち、その学術的価値は高い。