周茂叔愛蓮図
しゅうもしゅくあいれんず
概要
周茂叔は、中国宋代の大儒周惇頤のことで、ことのほか蓮花を愛でたという故事から、文人好個の画題とされた。本図は近景に三本の高い松を配し、その下辺に竹林中の小庵や周茂叔が水辺に船を浮かべ蓮を愛でるところなどを描いて中景とし、後景中央に主山を高く聳え立たせる図様で、その構図は「水色巒光図」(個人蔵)のような周文系書斎図を踏襲するのが明らかである。主峰や三本の松の形態も両図似通っている。しかし、前者が輪郭線や皴に渇いた焦墨の鋭い細筆を使って枯淡の趣を呈するのに対し、本図では、やや硬く勁い明確な描線を用いて墨も潤沢となり、前景と後景との自然な距離感が保たれるなど、その可視効果は近世への接近を思わせる。宗丹(湛)筆の伝称も、筆法に近いところのある小栗派の画家蔵三を考慮するとき、必ずしも不当ではない。
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