赤い肩かけの婦人像
あかいかたかけのふじんぞう
概要
赤い肩かけの婦人像
Woman with a red shawl
1924年
北海道立三岸好太郎美術館蔵[O-16]
画家としての出発期において、岸田劉生や草土社の画家に惹かれた三岸好太郎だが、初期の人物表現ではむしろアンリ・ルソー風の稚拙味のある素朴な雰囲気を醸し出すことが多いものだった。そうした傾向のなかでは、この「赤い肩かけの婦人像」は異色ともいえる画風を示し、彼の全人物画のうちでも最も写実的な描写がみられるものである。前年の第1回春陽会展入選作「檸檬持てる少女」とは対照的に、緻密な筆遣いで肩かけの質感を描き出し、正統な陰影法によって顔の肉付きを表している。画面右側に「千九百二十四年一月描之 好太郎写」という年記と署名がある。
モデルとなったのはこの年の秋に世帯を持つことになる画学生の吉田節子。つまり、後の洋画家・三岸節子である。「女子美時代、ライトレットのエリマキをしていて、形は四角、長いフサを垂らしていた。あのカルメンのエリマキに似ている。その私の肖像を描きに好太郎はずい分時日を重ねた」と節子夫人は後年に回想している。切れ長の眼差しや手を握りしめ右肩を上げたポーズに意志的な人柄が映し出されている。
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北海道立三岸好太郎美術館