東都両国橋夕涼之景色
とうとりょうごくばしゆうすずみのけしき
概要
溪斎英泉は、1791年江戸で武士の子に生まれるが両親を失って流浪し、狂言作者の弟子や遊女屋経営などを遍歴の後、文化年間(1804-18)後半頃から浮世絵師として出発した。遊廓に取材した濃艶な美人図を得意としたが、狩野派風の風景画とともに洋風の風景画もよくし、幕末の浮世絵界にあって異彩を放つ存在であった。ここに描かれた両国橋は、江戸の下町を流れる隅田川にかかり、当時橋をはさんで見世物小屋など各種の店が連なり、江戸最大の賑わいをみせる場所であった。画面は夏の花火の光景で、橋の上は無数の見物人であふれ、川面は数え切れないほどの屋形舟でごったがえし、舟上では花火に浮かれる男女が思い思いの姿で夏の夜を楽しんでいる。大きくアーチを描く橋を中景として両岸の家並みがやや極端な遠近法で処理され、両国橋の下にはさらに下流の橋が小さく描かれていて、雄大で臨場感に富んだ一大パノラマとなっている。
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公益財団法人 東京富士美術館