平戸礫岩の岩石地植物群落
ひらどつぶていわのがんせきちしょくぶつぐんらく
概要
礫岩は、平戸島の南西部にあり,全体が凝灰角礫岩からなる海抜287mの岩山である。特に,山頂部は大きく母岩が露出しており,また,尾根部は土壌が浅く母岩が露出している場所が散見される。このような大変乾きやすい立地には、イワシデ群落・ダンギク群落・ツシマママンネグサ群落など岩石地特有の植物群落が発達しており,山腹や谷筋など土壌の深い立地に成立している照葉樹林と好対照を見せている。
また,こうした立地条件のもと、かつて対馬陸橋をつうじて朝鮮半島と陸続きになったことがあるという地理的な条件により,朝鮮半島系植物と日本列島系の植物が共存した特有の植物相が見られる。その代表的なものとして次のようなものが挙げられる。
く朝鮮半島系>イワシデ,コバノチョウセンエノキ,ダンギク,チョウセンノギク,ネズミシバ・チョウセンニワフジ
く日本列島系>ニシノハマカンゾウ,ツシママンネングサ,イブキシモツケ、キハギ、 イブキジャコウソウ
また,礫岩には,特殊な立地条件のもとに,植物地理学的に見て特異的な分布をしている種が多数見られる。その中でもっとも注目されるものは、イトラッキョウ(ユリ科)である。高さ15センチ程度で淡紅紫色の花を咲かせる可憐な植物であり,世界で平戸島南部の岩石地にのみ分布している平戸島固有種である。その他こも,著しい隔離分布を示す植物が多く,その代表的なものとして以下のようなものがあげられる。
<隔離分布種>ミヤマビヤクシン(近隣分布地:多良・経ヶ岳(長崎);黒髪山(佐賀);障子岳備岡);五家の荘(熊本)),ネズミシバ(韓画・済州島),イブキジャコウソウ(波佐見町(長崎);黒髪山),チョウセンノギク(壱岐・対馬に各-カ所)
このように,礫岩の岩石地植物群落は、植物生態学的にみても植物地理学的にみても、日本では他所に類を見ない非常に価値の高い群落である。また,保存状態も大変良好である。よって、天然記念物として指定し保存を図ろうとするものである。