古瀬戸黄釉魚波文瓶
こせとおうゆうぎょはもんへい
概要
古瀬戸黄釉魚波文瓶
こせとおうゆうぎょはもんへい
愛知県
鎌倉
素地は灰白色陶胎で、紐撚り土輪積み法により形成される。形は撫肩からわずかに同膨らみとなり、裾は締め込みとなった締め腰で、鍔状突帯付の短い口頸を付す。同部表面を篦で削り、口頸部は轆轤挽きにより成形。底は平底。器面全体に施された灰釉は淡い黄緑色を呈し、同の下半は柳条化して釉雪崩となる。
文様は、頸下の周縁に十六個の蓮弁を、裾廻りには下端に各々回文を伴った二十四個の三重剣先文を、その間の胴全面に青海波文を、肩には左廻りに魚三尾を追廻し構図により、線彫りと印花の手法で表す。青海波や魚の輪郭線、剣先文は細い刻線により描き、蓮弁、魚の鱗、目などは型押しによる。
内側は、やや幅広(3~4㎝)の輪積みの痕跡がうかがえ、釉が部分的にかかって淡緑色を呈する。胴下半の一方にかせが認められる。
高36.1 口径9.9 同径25.0 底径12.2 (㎝)
1口
名古屋市東区徳川町1001
重文指定年月日:19860606
国宝指定年月日:
登録年月日:
名古屋市
国宝・重要文化財(美術品)
中世において、現在の愛知県瀬戸市周辺を中心に発生・展開した瀬戸窯では、わが国唯一の施釉陶器が生産されて中世窯業の中心的役割を担ったが、ここで製作された陶器はいわゆる古瀬戸として喧伝されている。
本瓶もその一例で、形姿は中国製磁器の梅瓶と称される瓶子を手本としているが、その口頸部はやや広口に作られている点が特色である。丸く張った肩からわずかにふくらみをもって締め腰型に窄まる堂々たる形姿や、入念な印花(型押し文様)、線彫りによる文様は、数多い古瀬戸のなかでも秀抜な作調を示している。
なおこの瓶と酷似する魚波文瓶子の陶片が萱刈窯跡から出土しているが、この窯跡からは元亨四年(一三二四)在銘の狛犬台座や、正中二年(一三二五)在銘の陶板が発見されており、本瓶の産地・製作時期がほぼ確定されている。