石山切(たまならぬ)
いしやまぎれ(たまならぬ)
概要
石山切は、西本願寺本『三十六人家集』三十九帖一具のうち、『伊勢集』と『貫之集下』を分割した断簡をいい、本願寺の故地摂津国石山にちなんで名付けられた。本幅は、平安女流歌人伊勢の家集『伊勢集』の断簡で、石山切として巷間に伝来している。現在の体裁は掛幅装であるが、本紙の右端に糊代跡が確認でき、もと粘葉装冊子本であったことがわかる。
料紙は白胡粉地に唐草文様を雲母刷りした唐紙に、銀砂子を散らした白茶色の染紙を破継の技法で右下に組み合わせ、銀泥にて蝶・鳥や紅葉の微細な文様を描き施して華麗である。
石山切は平安時代後期を代表する古筆切の名品で、料紙と優美な仮名とが相俟って、王朝貴族の典雅な美意識を窺わせる点で極めて価値が高い。
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国(文化庁 美術工芸品)