黄地牡丹蓮唐草文緞子胴服
きじぼたんはすからくさもんどんすどうふく
概要
表地は、牡丹と蓮を二重蔓で繋いだ唐草文の緞子、裏地は薄紅練貫平絹【ねりぬきへいけん】の袷【あわせ】仕立ての胴服である。
その形態は、身幅が広いわりには袖幅が狭く、立褄【たてづま】が短いなど一見して桃山時代の小袖類の特色が認められる。細部においても、例えば背割れの丸みを付けるのに、桃山時代の小袖の袂【たもと】の丸みを付ける手法と同じく、裂【きれ】の隅を摘んで糸で括る方法がとられている。
なお、本胴服には衽【おくみ】が付いているが、衽付きの方が古式と見なされている。
上質の緞子裂を用い、形態・仕立てに古様を示す保存良好な数少ない胴服として貴重である。
因みに本胴服は播州(現兵庫県)・小野藩一柳【ひとつやなぎ】家に伝来し、豊臣秀吉(一五三六-九八)から一柳直末(一五五三-九〇)が拝領したと伝えられている。(挿図は三四ページ参照)