木造弁才天坐像 もくぞうべんざいてんざぞう

彫刻 木像

  • 院派仏師
  • 愛知県
  • 南北朝時代 / 1334~1391
  •  像高は32.7㎝。八臂の宇賀弁才天坐像。頭髪は地髪部では疎らにまとめ、七つの髪束を肩まで垂らす。頭上には翁面蛇体の宇賀神をいただく。三道相をあらわす。大袖衣・𧞔襠衣・背子・裙・腰布を着す。腕は八臂とし、左の第一手は鉾、第二手は宝輪、第三手は弓、第四手は宝珠、右の第一手は鑰、第二手は棒、第三手は箭、第四手は剣をとる。右足を外にして趺坐する。
     檜材の寄木造り。彩色仕上げ。玉眼嵌入。宝冠・鳥居・冠繒・以上銅製鍍金。瓔珞・垂飾が付属。頭体幹部は前後二材矧ぎ。内刳りを施し、三道下で割首するか。宇賀神は別材矧ぎ。体幹部前面材には像心束を彫り残す。この体幹部材に、両体側部材・腰脇部材・両脚部材・裳先・両脚部の底板・八臂を別材で矧ぐ。八臂のうち屈臂する腕は肘でさらに別材を矧ぐ。
     像表面は白下地、彩色仕上げ(現状、灰色仕上げ)。頭髪の毛筋、眉、着衣部の唐草文様、頭上の宇賀神の元結紐、頭髪の筋、髭等は金泥で描く。唇は朱彩(宇賀神の唇も同様)。瞳は黒、その周りの黒目は茶。白眼白。目頭・目尻を朱でぼかす。
     後補部は両腰脇材、体幹材背面の下部、両脚部の底板(および底板の内の補材)、像表面の彩色、玉眼、宝冠、台座・光背。八臂および持物も後補か。
     本像は面幅が広く、頭部も四角く、髪際のラインも角張っており、また脚部にうねりのある曲線の衣文をつくり、像底には像心束を彫り残している。これらの様式、技法上の特徴はいずれも南北朝時代を代表する院派仏師の仏像に顕著なものである。以上から、本像は妙興寺創建後、まもなくして造立された弁才天像とみることができよう。宇賀弁才天像の作例は日本各地に現存するが、南北朝時代にさかのぼるものは多くなく、しかも院派系統の仏師による作例が現存するのは貴重である。修理箇所がやや多く、表面彩色が現代のものであるのは惜しまれる。
  • 像高32.7cm
  • 1軀
  • 愛知県一宮市大和町妙興寺字妙興寺境内2438番地
  • 愛知県登録
    指定年月日:20230804
  • 宗教法人 妙興寺
  • 有形文化財(美術工芸品)

 本像は妙興寺境内の弁天堂に安置される。弁天堂は『尾張名所図会』(江戸末~明治初に刊行)に描かれるが、創建年代は不明。

木造弁才天坐像

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