98 川口軌外(1892−1966) 静物(マンドリン) 1927−31年
和歌山県生まれ。本名孫太郎。1912年上京し、太平洋画会研究所、日本美術院洋画部などで学ぶ。24年の二度目の渡仏ではアンドレ・ロートの研究所やレジェの下で、とりわけキュビスムの摂取に努めた。29年帰国し滞欧作を二科展に出品。翌年、独立美術協会の結成に参加。戦後は国画会に迎えられ、抽象表現に傾いた新たな作風を確立した。
テーブル、その上に載せられたマンドリン、果物などキュビスムにおなじみのモチーフによって構成された《静物(マンドリン)》であるが、一方で川口が滞仏中に吸収したものがキュビスムの合理的な画面構成のみにとどまらなかった点も垣間見られる。たとえばキャンバスの矩形に対する机の傾きや、白い布の襞の表現などにより、画面がマンドリンを中心に旋回するような、表現主義的ともいうべきダイナミックな効果が生じている。