木造五大明王像 もくぞうごだいみょうおうぞう

彫刻 / 平安

  • 平安
  • 5躯
  • 重文指定年月日:19950615
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 瑞巌寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 松島湾に突き出して建てられる五大堂の造付厨子内に安置され、三三年に一度開扉の秘仏として厳重に祀られてきた五大明王像である。中尊不動は頂蓮を戴き、両目を見開き上歯牙を露し、弁髪の七か所を括るいわゆる弘法大師様の坐像で、他の明王像も面臂の数や本面の形相など、おおむね東寺講堂像(国宝)をはじめとする一般的な図像に依拠している。
 いずれも欅材の一木造で、不動は頂蓮から両腕の過半を含み両足部に至るまで、また他の四明王は真手や軍荼利・金剛夜叉の踏割蓮華まで共木より彫出し、各像とも内刳りを施さない構造になる。表面は白地彩色仕上げとする。降三世の踏む大自在天・烏摩妃や大威徳の乗る水牛は当初のものが遺る。不動の左肘より先および右手先、四明王の脇手のほとんどは桂材製で後補かとみられる。
 その古式な構造に加え、各像の面奥の深い頭部や抑揚のある体躯の肉付け、翻波式の各残りをとどめた衣文の彫法、不動の裳先を小さくまとめる形など、造形にも平安前期の余風が感じられる。しかし彫り口は浅く、目鼻立ちが小振りになり、全体に表現の穏やかさを増しているところから、製作年代は十世紀末から十一世紀初め頃と考えられる。その材質や表現からこの地方における製作とみられるが、特に十世紀中頃の宮城・双林寺薬師如来坐像及び二天王立像(共に重要文化財)とは作風に通じるところがあり、同じ系統に属する作者の手になるものと思われる。
 東北古代彫刻を考えるために逸することのできない作例であり、また東寺像、醍醐寺像(重要文化財)に次ぐ、完存する五大明王像の古例としても価値が高い。

木造五大明王像

ページトップへ