器の縁を輪花形に作る趣向は、当時さかんに輸入されていた唐物漆器の影響を反映したものである。力強い曲面によって的確に構成された、機能的な造形美を示す一方で、総体の鮮やかな朱漆と、経年の摩滅によって部分的に露出した黒漆との対比が、根来塗り特有の風合いを見せる。
「慕帰絵詞」や「福富草紙」など、室町時代の絵巻物のなかには、この種の高台付盆に、唐物茶碗の一種である天目【てんもく】をのせた天目台を置いてある様が描かれているが、銘文の「天目盆」から、こうした器物を天目盆と称していたことが確認される唯一の例証であり、かつ製作時期の下限(享徳4年・1455)が明らかな基準資料として、また喫茶の歴史資料としても注目すべき貴重な遺例である。